大沢在昌さんの「極悪専用」を読む。
賃料の月額が百万、部屋によっては数千万という途方もない高級マンション、
なのだが、住民はすべて、闇社会の悪党ばかり。
住民同士の殺し合いも日常茶飯事で、死体はすべて、
特別回収業者が処分してくれる。
そこでは、管理人がただ一人、住民のプライバシーを守っている。
そんなマンションに放り込まれたのは、「俺」である望月拓馬。
大物の祖父のおかげで、オンナ、麻薬、酒、車、
何の不自由もなく、好き勝手な生活を送っていた。
だが、その度を越したヤンチャぶりに腹を立てた祖父の命により、
彼は拉致られ、管理人の助手としてそのマンションに放り込まれた。
逃亡したり、上司にたてついたら、そく処理されるという状況で、
「とりあえず、一年頑張れ」と祖父から突き放されるのだが…。
ハチャメチャ感は十分、伝わってくるのだが、
悪党たちの顔が今一つ、はっきりしない。
その存在感は希薄で、軽めのハードボイルドを読んでいるような
感覚だ。
だが、この物語は、ノワールというより、
オッサン管理人、白旗と拓馬との心の交流(あれば、の話だが)
を描いた物語なのかもしれない。
初めからコメディとうたっているから、
この作家さん特有のヒリヒリ感は、またの機会ということで…。