「湿原に沈んだ者は、永遠に水の中を彷徨うという…」、桜木紫乃さんの「凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」を読む。
「北海道警釧路方面本部シリーズ」と言ってもいいだろうか。
二作目の「氷の轍」を先に読んでしまったのだが、
二作目で大門真由の相棒となった片桐の、刑事としての過去が
「凍原」で把握できた。
片桐と、そして因縁のある松崎比呂、二人のコンビが
札幌からやって来て釧路で殺された若者の痕跡をたどっていく。
それは、このコンビの過去をたどる道でもあった。
重々しく、暗い作品だ。
さまざまな女たちの、一筋縄ではいかない人生が描かれ、
交錯し、そして、バラバラになっていく。
これは、「氷の轍」でも感じたことだ。
戦後の、樺太からの引き揚げ者が辿る
過酷な運命。
だからといって、罪を犯していいわけではない。
ましてや、どうして子どもが、
過去の清算をしなければならないのか。
「氷の轍」にもあったが、
被害者は、殺される理由があって殺された。
加害者は、殺す理由があって殺した…、という。
だが、被害者は本当に、殺されるべくして殺されたのだろうか。
犯人は、殺すべくして殺したのだろうか。
この結末は、誰も悪くない、
いや、誰もが悪いんじゃないかと、
どちらの方向にも向かわされ、
至極、あいまいな気持ちになってしまう。