唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

新米弁護士を振り回す依頼人たち…、彼らは、強い意志で、欲しいものを手に入れた…。織守きょうやさんの「少女は鳥籠で眠らない」を読む。

 

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

 

 

 

この作家さんは、「記憶屋」という作品から入ったが、

どちらかというと、この新米弁護士シリーズの方が好きだ。

 

家庭教師として雇われた家の、15歳の少女に

淫行を働いたとして逮捕された大学生、

生まれたばかりの娘を置いて不倫に走った妻との離婚問題に

悩む男など、四話からなる連作モノである。

 

依頼人は嘘をつく。

そうでないにしても、真実をすべて語るとは限らない。

新米弁護士、木村が相手をする、

少しばかりひねりを加えた、依頼人たちの事情が面白い。

 

この作品の特徴は、木村の視点で物語が進むのだが、

陰の主人公は、依頼人たちである。

木村や、先輩弁護士、高塚は、傍観者であり、

依頼人たちこそが、舞台で生き生きと動き回る。

 

四つの話で登場する彼らは、

いずれも、したたかで、肝が据わっており、

手に入れようと決めたものを、必ず手にする。

実に魅力にあふれている。

 

特に、表題となる「少女は鳥籠で眠らない」の少女、

黒野葉月には圧倒される。

最後には、賞賛の拍手をしたくなるほど。

 

そして、これは、木村の成長の物語でもある。

依頼人たちに感情移入し、

高塚に「懲りないね」と言われ…。

確かに、まだまだ、成長過程ではあるが。

 

案件に関わって木村は感じる。

「自分は最後まで何もできなかった。最初から、彼らに木村は

必要なかった。。。。強い意志を持った人たちにとっては、

弁護士も道具でしかないのかもしれない。。。」

 

それでも、最後に木村は思う。

 

「誰かの役に立とうとすること、それ自体を恥じたり

無駄に思ったりする必要はない。。。。自分の無力さに落ち込むことも、

弁護士という仕事に失望することもあるだろう。。。」

それでも、「何度繰り返しても、懲りたくないんだ」と。