唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

おちかと勘一の行く末は、どうなるのだろう。どうしても気になる…。宮部みゆきさんの「三鬼」と「あやかし草紙 三島屋変調百物語」を読み返す。

 

 

 

「三島屋変調百物語」シリーズの第四作、「三鬼」を

何度繰り返して読んだことだろう。

 

このシリーズ、現在は聞き手が富次郎に移ってしまったが、

やはり、百物語は、三島屋おちかの物語だと思うので、

何か、物足りなさを感じる。

 

それで、どうしても、過去の作品を読み返してみたくなるのだ。

 

特に、「三鬼」の最終話は、淡い恋心を抱いていた利一郎との別れ、

そして、お勝が「縁がある」と言った瓢箪古堂の勘一との出会い、

さらに、新しい聞き手となる富次郎の帰宅と、

新しい物語への幕開けとなる要素がつまっている。

 

そして、五作目、「あやかし草紙」では、

おちかはめでたく、勘一と夫婦になるのだが、

そのきっかけとなったのは、勘一が「黒白の間」での語りだ。

 

それは、人の寿命がわかる書肆をめぐる話なのだが、

それを勘一は見てしまったのではないかと、おちかは推測し、

勘一の行く末を見届けたいという覚悟で、

勘一に逆プロポーズをするのだ。

 

富次郎に聞き手が移って二作、

おちかと勘一は、つつがなく暮らしているようで、

それはそれで良いことなのだが、

ひょっとして、勘一の寿命がつき、

おちかは三島屋へ戻り、また、聞き手となるのでは、と、

つまらない想像をたくましくしてしまう。

 

いや、別に、勘一を早く退場させたいわけではないのだが、

そして、「長閑で、動じない、のほほんとした柔かさ」と

描写される勘一のたたずまい、

それは、辛い過去を持つおちかと相手として

ぴったりだと思うのだが、

そのたたずまいは、「向こう側」に行ってしまった人、

という感じがするのだ。

 

それは、いわくつきの書肆を見てしまい、

寿命を悟ったからだとも思えるが、

やはり、泣いて、笑って、怒って、という

人間味あふれる人物が、おちかの相手であってほしい、

そう思ってしまうのは、余計なことだろうなぁ。