開署セレモニーを目の前にした新設の警察署に、一体、何が起こる?元白バイ隊員が、再び白バイにまたがり…。松嶋智左さんの「開署準備室 巡査長・野路明良」を読む。
開署を目前にした姫野警察署。
その準備のため集められた準備室のメンバーの活躍が描かれる。
開署の準備に余念がない準備室だが、
しばらくは、事件が起こるわけでもない。
ただ、所々で、怪しい行動を示す係長や、
間違えて搬入された什器、誰も居ないはずの部屋のカメラに
映る人物の影など、何かが起きようとしている、
不穏な空気が、徐々に迫ってくる。
始めは、どこへ向かわされているのか分からない感じで、
ページの先へ先へと気持ちが焦る。
やぁ、もう、読まされちゃってると、思いながらも、
最後まで一気に行かねばすまないような気になる。
主人公は、準備室の総務を任された、野路明良。
彼は、かつて、白バイ隊のエースで、その卓越した技術により、
英雄とさえ呼ばれていた。
だが、ある交通事故により、仲間が死に、
野路自身も、指がマヒするという後遺症を負った。
白バイに乗れなくなった野路は、
準備室に回され、いい加減な日々を送っている。
その頃、男性の白骨遺体が発見され、
それが、12年前の現金輸送車襲撃事件へと繋がり、
そして…。
思いもかけず、野路が、白バイ隊員の想いを背に、
再び、白バイを操り、疾駆する姿に、胸が熱くなった。
この作家さんは、元女性白バイ隊員だとか。
そのシーン描写は、さすが、迫力満点だ。
ただ、前代未聞の悪女、犯人の行方が分からないという結末を、
どう、捉える?