羽田圭介さんの「盗まれた顔」を読む。
見当たり捜査官。
最近、この設定が登場する作品をよくみかける。
見当たり捜査官は通常の捜査をしない。数百人という指名手配犯の顔を記憶し、
街を歩きながら、手配犯を見つけ逮捕する。その繰り返しだ。
だから、コツコツ調べ、推理し、犯人を追い詰めるという
ヒリヒリするような緊迫感や、スピード感はない。
雑踏の中で、ピンと来た顔を見つけたら、追跡し「声かけ」をする。
そうやって逮捕すればそれで終わり。それだけが結果であり、
存在する意義。
それは、ある種、初動捜査が終わったら所轄へ引き渡す、
機捜のようなものか。
白戸を中心とする捜査官3人の見当たり捜査チーム。
一人も見つけられない日が数カ月も続くと、ストレスや崩れてゆく自信、そういった苦悩を
かかえ、毎日ただただ、仕事をこなす。
なかなか細部まで描き込まれ、これまで触れたことのない世界が
興味深い。
そうした業務の中で、白戸は、かつて同僚であり、ある事件で死んだとされている
男の顔をみつけてしまう。幽霊と出会った瞬間から、公安、中国犯罪集団などが
複雑にからみあう陰謀に巻き込まれていく。
読みごたえのある作品だ。