小路幸也さんの「東京カウガール」を読む。
この作家さんの作品はいずれも、
柔らかで軽く、心が疲れた時に読む本としては
もってこいだろう。
前にも書いたが、悪意や裏切りなど、
負の感情を排し、人の心に寄り添ってくる。
だが、設定としては結構、ディープだから、
スリル&サスペンスの、ワクワクドキドキ仕立てに
調理しようと思えば、できるのだろうが。
主人公は、カメラマン志望の大学生、英志。
優しくて誠実な草食系(?)の男の子。
ひょんなとき、女性が男たちを、完膚なきまでに叩きのめす
場面を目撃してしまう。
その瞬間から、英志の心はその彼女でいっぱいになる。
彼女を「カウガール」と呼んで、
その正体を探ろうとするが、
その彼女は、以前、気になったコンビニの店員と似ていた。
男たちを叩きのめし「カウガール」の真意は…。
主人公もそうだが、相変わらず、彼を取り巻く登場人物が
魅力的である。
英志の叔父でゲイの繁、繁の店の常連、フクさん、
「カウガール」の祖父である岡島なんかは、
もっともっと知りたくなる。
そして、もう一人の祖父の石垣のキャラは
殆ど描かれていないが、彼らを中心とした物語も
出来上がってよさそうだ。
そう思うと、う~ん、ちょっと物足りなさが残る。