葉真中顕さんの「絶叫」を読む。
「転落していく人生」、
サスペンスやミステリーのネタとしては、
ありがちな設定だと、思った。
そう思いながら、反対に、特殊な話でもあると、
思った。
事件捜査の進展とともに、
被害者の人生が並行して描かれていく。
人は、どこで躓き、どこで間違えるのだろうか。
どうやって、「普通」の社会生活から
転げ落ちてゆくのか。
人は誰でも、自分の居場所を探そうとする。
だが、本当に快適な居場所などあるのか。
というより、居場所は本当に必要なのか。
事件を捜査する女刑事、奥貫綾乃も、
居場所を探し、そしてそれを失った一人だ。
事件の被害者は、どんどん転がり落ち、
そして破滅に向かっていくかのように見える。
だが、結末では…。
人間とは、なぜに、これほど不安定で、バランスの悪い、
厄介な生き物なのか。
そして、「絶叫」、それは誰の喉からほとばしる
叫びなのだろうか。
密閉されたマンションの一室で見つかった女性の死体。
それは、数カ月たち、数匹の飼い猫に食べられた後のある
無残なものだった。
死因も判明せず、孤独死として処理されようとしたが、
被害者、鈴木陽子の足跡をたどるうち、
大きな闇が浮かび上がってくる。