たくさんの殺人と、犯罪者がいっぱい…。長浦京さんの「マーダーズ」を読む。
タイトル通り、たくさんの殺人と、多くの犯罪者がいる。
前作、「リボルバー・リリー」に匹敵するスリリングな展開で、
楽しめた。
商社マンの阿久津清春は、ある夜、ストーカーに襲われたところ助けた女性、
柚木玲実から脅迫を受ける。
清春は、十七歳の時、複数の人間を殺していた。
彼女は、過去の殺人の証拠を握っているというのだ。
その秘密と引き換えに、自殺したとされている母親の死の真相と、
同時に失踪した姉の行方を見つけて欲しいという。
さらに玲実は、清春の相棒として、もう一人、組対五課の女刑事、
則本敦子を、同じような過去の秘密をネタに脅していた。
そして、三人の異常な捜査が始まるのだが…。
前作の、逃げるリリーたちには、思う存分、
肩入れできていたのだが、
今作の主人公たちには、妙に座りの悪さ、落ち着かなさを
感じる。
それは、三人の繋がりの異常性からくるものなのか。
裏切り、殺し合いがあってもおかしくないという、
緊張感が三人の間にある。
だからこそ、ヒリヒリした感じを余計に味わうことができるのだろう。
三人は善人ではない。というより、悪人である。
そして、この作品に登場する人物は誰もが悪人だ。
清春や則本は殺人者だ。殺人者であるにもかかわらず、
その過去も、人物像も、サラっとスルーしそうになる。
二人が、サイコパスではないから?
いや、必ずしも、無いとは言い切れない。
許される殺人など、あるはずがないのに…。