唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

厄介な男ふたり、いつかは、命のやり取りを…。あさのあつこさんの「鬼を待つ(弥勒シリーズ)」を読む。

 

鬼を待つ

鬼を待つ

 

 

 

抜き身の刀のような男、同心、小暮信次郎と、

かつては武士であり、父のため刺客をつとめ、

何人もの命を屠ってきた男、信濃屋清之介、

この二人の男の奇妙な繋がりを描く「弥勒」シリーズも

もう、九作目だ。

 

緊張をはらんだ、息の詰まるようなこの二人の関係、

そしてやり取りに、

僅かでも清涼な風をもたらせるとしたら、

信次郎に仕える、岡っ引きの伊佐治の人柄だ。

 

信次郎が持つ歪みは、やはり、シリーズ一作目から

読んだほうが、より理解できるだろう。

 

ま、この厄介な性格の男が、

慌てふためく様を、一度は見てみたいと思うのだが、

なかなか、それは叶えられない。

 

信次郎と清之介の関係は、実に微妙なバランスを保っている。

 

だが、この二人は一人、一人は二人だという気がする。

信次郎はもう一人の清之介であり、

清之介はもう一人の信次郎なのだと。

 

この二人は、いつかは、命のやり取りをするのだろうか。

 

それを阻止できるとしたら、伊佐治しかいない…。

 

 

酒の上の諍いで暴力を振るい、相手を殺してしまったと

思い込んだ菊八が、神社で首を吊った。

 

菊八の相手、大工の棟梁が、今度は、

首を掻っ切られ、そこに五寸釘がうたれるという

惨殺死体で発見される。

 

さらに、呉服の大店、八代屋太右衛門が、

同じ殺され方をした。

 

八代屋は、遠野屋の「遠野紅」を手に入れようと、

ちょっかいをかけていた。

 

清之介の亡き妻、おりんにそっくりな女、およえと出会い、

心乱される清之介。

 

二つの殺しは、どう、繋がるのか。

信次郎の鋭い推理、伊佐治の想い、

すべてにドキドキしながら、結末まで突っ走った。