親の死を待つ兄弟三人、巨額の遺産を望み…。下村敦史さんの「絶声」を読む。
親族、兄弟、遺産をめぐる争いは、
TVドラマでは鉄板のストーリー。
「昭和の大物相場師」と言われた父親が失踪して七年。
死亡とみなされる失踪宣告を待ちわびる兄弟三人。
失踪宣告が認められた時点で、巨額の遺産が手に入るから…。
だが、その時が来る数分前、これまで放置されていた
父親のブログが突然更新された。
「私はまだ生きている」。
死亡扱いは保留となり、慌てふためく三人。
父親は失踪する前、すい臓がんが見つかり、
命の残り時間が限られていた。
父はもう、どこかで死んでいるはずだ…。
ブログを更新しているのは、本当に父親なのか、
彼はまだ生きているのか。
誰をも信じることなく、愛することなく、
誰からも信じてもらえず、愛されずに生き、
人の想いを踏みにじってきた男が、
命の最後に感じたものは。
そして、ブログに仕掛けられた罠。
それほどまでに、親子間の確執は深いものだったのか。
その確執は、救いようのない結末へと続いていく。
物語の展開は面白かったが、
ただただ、親の死を待つ子どもたちの負の感情が
うっとうしくもあった。
救われた者は、ありやなしや。