首絞め殺人鬼、<ヒロアキ>とは一体、誰?…。森晶麿さんの「毒よりもなお」を読む。
この作品、エンタメとして、好き嫌いがはっきりと分かれそうだ。
<ヒロアキ>という犯罪者に魅せられた主人公、カウンセラーの千尋。
千尋は、ヒロアキに三度、首を絞められている。
受験を目前にした女子高生だったころ、自分の首を絞めようとした
ヒロアキのカウンセラーになって、救いたいと一途に思うようになる。
この心の動きが、不可思議としか言えない。
というか、この主人公こそが、「正常」の域を外れた
「異常」性を持ち合わせているのか。
作品全体に、何か、ねっとりとしたモノが
漂っているような気がしてくる。
そして、大学を卒業して、カウンセラーになった千尋は、
自殺願望のあるクライアントを通して、ある自殺サイトを知るが、
そのアカウント名は「首絞めヒロ」だった。
千尋は、この「首絞めヒロ」が<ヒロアキ>ではないかと疑い、
<ヒロアキ>の消息を尋ね始める。
そして、女性の遺体が発見されるのだが…。
後半から結末は、「え?」っていう世界に。
一転、二転で、分かりにくい。
周りの人間にとって、毒物である<ヒロアキ>。
精神科医は、精神分析を必要とする犯罪者と対峙するうち、
その悪魔的な思考に取り込まれそうになるという話を聞く。
この作品も、読み進めるうちに、どうにも気味の悪い
毒気にあてられているような気がしてくる。