もっと読みたい!「永見緋太郎」シリーズ!!田中啓文さんの「真鍮のむし」を読む。
ぶっ飛んだ作品を続けて読んだ後だからか、
このシリーズに戻ってきてしまう。
というか、よけい、戻りたい気になるのだ。
それは、味の濃いモノや変わり種の料理を食べた後、
舌を元に戻したいと思うように。
ミステリーとしては、ゆる~いのだが、
音楽ファン、特にジャズファンには、どうにもたまらない。
ゆる~くても、ジワジワくる面白さは、変わらない。
伝説のジャズマンだの、老いても衰えを知らない
ジャズの魂だのという話が、ボコボコ出てくるから。
今回の作品は、永見より、唐島メインで進む。
唐島は、ジャズマンのくせに(というのは、偏見かもしれないが)、
バランスのとれた人物に感じる。
それは、永見の変人ぶりがあるせいか、
あるいは、物語の進行役に徹しているから
(これまでの作品では)か。
行き詰まりを感じた唐島は、自分のバンドを解散し、
アメリカへと旅立つ。
永見も唐島にくっついて、ニューヨーク、シカゴ、
ニューオリンズと、旅をする。
街の描写も秀逸。
ページのありとあらゆるところから、都市の喧騒、
楽器の音色、スイングが聞こえてくる。
前半まで、永見のなぞ解きも、演奏シーンも
おとなしくて、少々、物足りなさを感じていたのだが、
「真鍮のむし」では、
「けけっ、ぎあ…ああああ…ぼぎけっ!」という
シャウトが聞け、やっと、それらしくなってきたと、
ワクワクした。
そして、相変わらず、「大きなお世話的…」のオマケが
楽しい。
「永見緋太郎」シリーズとしては3作目だが、
どうやら、とりあえず完結するようだ。
だが、あとがきに、「東京創元社に『永見シリーズ、もっと読みたいぞ!』と
お声をかけてください。」とあるので、
ここで、叫ぼう、「もっと、読みたい!」