闇の医療、臓器売買。厳しい現実の前に、正義はもろく砕け散るのか。犬養シリーズ第五弾。中山七里さんの「カインの傲慢」を読む。
犬養刑事シリーズの五作目。
このシリーズでは、正解の出ないテーマが目立つように
なってきた。
今回は、臓器移植と貧困。
事実だけを一つひとつ積み上げ、
謎を解明し、犯人を追い詰め、逮捕する。
そういう正統な刑事モノであれば、
全てのピースが収まるべきところに収まり、
一枚の絵として完成するジグソーパズルのように、
最後のピースをはめこんで、
スッキリした達成感を感じる。
だが、今回は…。
貧困のあまり、自分の臓器を売る。
それを買い取り、富裕層に売りつける。
そのビジネスが特に、子どもを相手にしたとき…。
テーマがテーマだからかもしれないが、
そして、事件の解明は、決して勝ち負けでないにしても、
犬養の敗北を示唆するような結末。
エンタメ作品であるのだから、
正義も救いも、あって欲しかったなぁ。
臓器を奪われた少年の遺体が発見された。
そして、また一人、二人と…、いずれも肝臓を奪われていた。
犬養たちの捜査により、最初の少年は中国人と判明する。
高千穂は、中国へ。
暗躍する臓器密売組織を追って、
犬養らは、捜査を続ける。