サニワとして、仙龍の悪しき因縁を断ち切ろうと覚悟を決める春菜、感動モノです。内藤了さんの「怨毒草紙 よろず建物因縁帳」を読む。
「よろず建物因縁帳」シリーズも、もう七作目。
今作は、仙龍を始めとする鐘鋳建設の男たちの活躍が、
少々、地味だったこと、
春菜の天敵、「パグ」こと、長坂所長と春菜の
丁々発止のやり取りが見られなかったこと、
物足りなさはいろいろあるが、
ともかく、春菜の成長が胸にジーンときた。
仙龍の悪しき因縁を断ち切ろうと決意する、
春菜の覚悟、その潔さにドキドキした。
そして、小林教授が語る民俗学の話は、いつもながら興味深い。
因と縁は、一朝一夕に成るものではなく、
長い時をさかのぼったその先から続く、
あるいは、積み重なるものだということ。
さらに、教授の昔の人々は、「自然の摂理に逆らうことなく、
それを活用する術を心得ていた」という言葉心に染み入る。
摂理に逆らう現代の私たちは、もはや、
自然の仲間からはじき出されているのかもしれない。
人間は、「不自然な生き物」として、
この命をどこに運ぼうとしているのだろうか。
隠温羅流の因縁を調べようと心を固める春菜、
そろそろ、導師に課せられた過酷な運命にまつわる謎が
解き明かされていくのだろう。
次回が待ち遠しい。