一人の男の自殺が、死の連鎖を呼ぶ。友人の死の真相を追って、刑事・永瀬が命をかける。伊岡瞬さんの「赤い砂」を読む。
冒頭の、「電車飛び込み自殺」シーンから引っ張り込まれ、
そのままの勢いで、結末まで読み切った。
ヒーローでも、凄腕でもない刑事が、
同僚や上司から厄介者扱いされながら、
職、さらには命を賭して真相を追う。
約二十年前の、この作家さんのデビュー前に書かれた作品だということ。
感染症騒ぎで、世の中、ひっくり返った今だからこそか、
主人公である、永瀬刑事の、一人で突っ走る熱い思いも何もかも、
古さを感じることなく読めた。
コンビを組んだ、本庁の刑事、長谷川もいい味出していると思ったのだが、
肩透かし。
さらに、結末、永瀬の運命を読者に委ねるのは…。
阿久津という一人の男の自殺が、永瀬の同僚である鑑識の工藤、
阿久津が飛び込んだ電車の運転士、早山、私立探偵の斉田の自殺へとつながる。
自殺の連鎖に疑問を抱く永瀬は、あるウイルスが関わっていることを知る。