昆虫好きの「おとぼけ」探偵、魞沢が再登場。ゆかりの人物たちが、謎を引き連れてくる。櫻田智也さんの「蝉かえる」を読む。
とぼけた名探偵、「魞沢泉」シリーズの二作目。
一作目を読んだ時から、ずっと、思っていた。
魞沢泉という人物は、何者なのか。
その答えの一部、ほんの一部だが、今回、触った気がする。
「ホタル計画」での、魞沢の少年時代など、
魞沢の周囲から、少しずつ、少しずつ、彼の実体が浮かび上がってくる。
丸江ちゃん、斉藤編集長、江口医師の目を通して。
それでも、断片であるから、やはり、分からない。
魞沢とは、何者なのか。
ま、何者なのかということなど、大した問題じゃないのだろう。
彼が、さまざまな人々と関わり、
関係した出来事の謎を解いていく。
その過程と、人との関わり方、謎の持つ意味、
そんなものこそが、「大した問題」なのだろうから。
一作目に比べ、今回は、
魞沢自身が謎と関わり、深く入り込んでいるような気がする。
それに、ほんわかした「おとぼけ度」も少なかったような。
で、やはり、気になる。
彼は、何者なのか。
「きれいごとのひとつでも口にしなければ、
こんな世界、生きていけないじゃないですか」
こんなセリフを吐くなんて、魞沢の別の面を見た、気がした。
魞沢という青年を、もっと、知りたい。
そのためにも、このシリーズが続いてくれることを願う。