唯一ノ趣味ガ読書デス

ハードボイルドや刑事モノばっかりですが、読んだ本をご紹介。

ジビエ料理のシェフと、不器用なハンターとの友情と、そして、命の物語。近藤史恵さんの「みかんとひよどり」を読む。

 

みかんとひよどり (角川書店単行本)

みかんとひよどり (角川書店単行本)

  • 作者:近藤 史恵
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: Kindle版
 

 

 

いつものように読みやすく、それでも、

さまざまなものを心に残してくれる作品。

 

ミステリーというよりは、食を通して、

暮らし方や、生き方、人との付き合い方を考えさせられる

小説といったほうがいいかも。

 

フレンチレストランの雇われシェフ、潮田はジビエ食材調達のために入った山で、

遭難しかかる。

助けてくれたのは、ハンターの大高だった。

 

それをきっかけとして、ビジネス上の付き合いが始まる。

 

だが、徐々に付き合いが深まるにつれて、潮田は、

不器用な大高が言う「人生を複雑なものにしたくない」と

いう意味が分かるようになり、大高も、潮田に心を開いていく。

 

「命の恩人」の大高に対して潮田は、最初、敬語で対していたのが、

急に「タメ口」になっていたのが気になった。

「?、読み飛ばしたか」と思い、慌てて前のページに戻ったのだが…。

 

男二人の、着かず離れずのような付き合い方が、

淡々としていて好ましいし、

何をやっても負け戦だった潮田が、食や、

大高との付き合いを通して、前を向けるようになっていく

その過程も興味深い。

 

ただ、放火や暴力事件といったミステリー要素が少々中途半端で、

かえって、いらんかったかなと。

もう一つ、澤山オーナーも、従業員の若葉も結構魅力的なキャラなのに、

こちらも、描かれ方が、中途半端だったような気もする。

 

それが、残念と言えば、残念。