ジビエ料理のシェフと、不器用なハンターとの友情と、そして、命の物語。近藤史恵さんの「みかんとひよどり」を読む。
いつものように読みやすく、それでも、
さまざまなものを心に残してくれる作品。
ミステリーというよりは、食を通して、
暮らし方や、生き方、人との付き合い方を考えさせられる
小説といったほうがいいかも。
フレンチレストランの雇われシェフ、潮田はジビエ食材調達のために入った山で、
遭難しかかる。
助けてくれたのは、ハンターの大高だった。
それをきっかけとして、ビジネス上の付き合いが始まる。
だが、徐々に付き合いが深まるにつれて、潮田は、
不器用な大高が言う「人生を複雑なものにしたくない」と
いう意味が分かるようになり、大高も、潮田に心を開いていく。
「命の恩人」の大高に対して潮田は、最初、敬語で対していたのが、
急に「タメ口」になっていたのが気になった。
「?、読み飛ばしたか」と思い、慌てて前のページに戻ったのだが…。
男二人の、着かず離れずのような付き合い方が、
淡々としていて好ましいし、
何をやっても負け戦だった潮田が、食や、
大高との付き合いを通して、前を向けるようになっていく
その過程も興味深い。
ただ、放火や暴力事件といったミステリー要素が少々中途半端で、
かえって、いらんかったかなと。
もう一つ、澤山オーナーも、従業員の若葉も結構魅力的なキャラなのに、
こちらも、描かれ方が、中途半端だったような気もする。
それが、残念と言えば、残念。