白人女性の白骨遺体とともに、頭蓋骨が指し示す物語とは…。長崎尚志さんの「風はずっと吹いている」を読む。
なかなか、ヘビーな内容の作品だったが、
そのヘビーさに負けない、ぐいぐいと引っ張っていく力強さがあった。
原爆の恐ろしさ、悲惨さにまつわるストーリーで、
この時期に作品と出会うのは、縁のようなものか。
原爆というものへの憤りがテーマでもあるが、もちろん、
殺人事件の謎を追う、そのドキドキもおろそかにはなっていない。
広島の郊外で、白人女性の白骨遺体と、そしてその傍に
頭蓋骨が一つ見つかった。
白骨遺体は死後半年以上、頭蓋骨は1950年以前に生きていた
日本人のものだとわかる。
白人女性の身元は、日本で何をしていたのか、
そして、頭蓋骨の持つ意味は…。
靴をすり減らす刑事たちの前に、
終戦直後の日本が浮かび上がってくる。
原爆犠牲者の頭蓋骨を、
土産物として米兵に売っていた少年たちの話、
そういう時を知らないワタシでさえ、すでに老齢だ。
誰が、であろうと、伝えていくことの重要さを、
また新たに気づかせてくれる。
って、ミステリーとしても、ド級に面白い。